スタッフのつぶやき

アーティストって何?

みなさん、こんにちは。
世間は秋の三連休、いかがお過ごしですか?
お天気が心配されていましたが、今のところ思いのほか良いお天気に、気分も晴々とします。

さて、今日はちょっと真面目にブログを書いてみようと、難しいお題を設定してみました。
この「横須賀ブルースティック」ってブログネームのヤツは、どうでもいいコトかイベントの宣伝しかしないなぁ…と思われているかもしれないので、今日はちょっといつもと雰囲気を変えてみたいと思います。

私はある大学で非常勤講師をしていまして、学生さんと一緒に「アーティスト」というものについて学んでいます。正直、私もまだよくわかっていないところがあるので、「一緒に勉強中」ということです。
学生さんに「好きなアーティストは誰?」と訊くと、決まってJ-POPの歌手とかシンガーソングライターとか、そういった人たちの名前を挙げてくれます。もちろんそれも間違っていないのかもしれませんが、そんな「アーティスト」に私はとても違和感を覚えます。
今はどんな人でも「アーティスト」と呼ばれる時代です。でもそれって本来の「アーティスト」ではなく、「アーティスト」という呼び方だけが流行っているだけなのかもしれない…といったことを学生さんに投げかけました。

「アーティスト」は日本語に訳すと「芸術家」。
じゃあ「芸術」って何?といったことを順番に掘り下げてみます。「芸術」とは、色・形・音・映像・身体・言葉などを使った表現活動とその成果全般、つまりこの表現活動に関わっている人が総じて「芸術家」であり「アーティスト」ということになります。
しかし、アーティストの定義は非常に曖昧で、その呼び方だけが世間には溢れています。世の中に溢れているこの「アーティスト」を「芸術家」に置き換えると、相当違和感があることは間違いないと思います。
なぜこの呼び方がこんなにも世の中に蔓延しているのか、昔は「アーティスト」なんて気軽に呼ばれるものではなかった、なんて話からその歴史を紐解いてみると、これがレコード会社の商業的戦略だったということが判明しました。1990年代初めに大手レコード会社が自社所属の歌手たちを「アーティスト」と呼んで売り込んだことが今の「アーティスト」蔓延事情の始まりだとか。「アーティスト」っていう言葉はちょっと価値が高そうだし、スマートだし、おしゃれな雰囲気もあるし、ということでイメージのブラッシュアップを図ったのではないか、ということです。

「アーティスト」という呼び方の歴史ではなく、本来の歴史についてももちろん学びます。「アーティスト」という概念は中世まではなく、すべて「職人(アルチザン)」という定義であったこと、ルネサンス以降に新しい発想や技術を意欲的に編み出した「アルチザン」を「アーティスト」と呼ぶようになった、といったこと。
じゃあ「職人」と「アーティスト」は何が違うのか?もちろん元来同じ定義であったことから共通項はたくさんあるのですが、大きく違うことはその成果全般が「受け手側」に委ねられているのか「作る側」に委ねられているのか、ということではないでしょうか。表現活動やその成果全般は「どんなクオリティで、誰のための、何のため?」といったことが常に問われ、その判断を下すのがいつも受け手側なのが「職人」で、その問いを受け手側に投げるのが「アーティスト」なのではないか。
だから「職人」は「応える人」であり、「アーティスト」は「問う人」である、社会に対して問題を投げかける、その方法が表現活動である人たちが「アーティスト」なのではないでしょうか?
学生さんにこう投げてみると、「うん、そう思う」という人もいれば「そうじゃないだろう」という人もいる。その理由ももちろんそれぞれにしっかりある。これが学問の面白いところです。
私の話は一つの見方であって、これが必ずしも正解とは限らない、もっと違う見方もあるかもしれない、それを考えようとすることが学問の醍醐味なのだと私は思います。

「芸術の秋」ということでそんなイベントも目白押しの季節になりました。
「芸術家=アーティスト」について、これからもっと勉強したいと思います。

横須賀ブルースティック

スタッフのつぶやきカテゴリー

スタッフのつぶやき

市民主催講座ご案内

NADA★創作講座~ボイスドラマ編~